『リバー、流れないでよ』感想とレビュー。低予算映画だからこそ面白い、ローカルSFの傑作。

最近、「低予算映画」が流行の兆しを見せています。

2018年の『カメラを止めるな!』は低予算ながら斬新なアイディアと見事な脚本で、日本中に「カメ止め」旋風を巻き起こしました。

また2022年の『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』や、2024年現在上映中の『侍タイムストリッパー』はこちらも低予算ながら、海外の映画祭でも絶賛されるという快挙を成し遂げています。

そんな中、日本の「低予算映画」として2023年公開された『リバー、流れないでよ』を今回はレビューしていきます。

画像引用:映画.com
目次

基本情報

タイトル『リバー、流れないでよ』
配信AmazonプライムビデオDMM TVLemino
公開年2023年
脚本上田 誠
監督山口 淳太
制作ヨーロッパ企画
キャスト藤谷理子、鳥越裕貴、永野宗典 他
上映時間86分

特筆すべきは、脚本家の上田誠監督の山口淳太

低予算ながら、世界27ヵ国53の映画祭で上映&23もの賞を受賞したとんでもない映画『ドロステのはてで僕ら』の制作チームが作った、ヨーロッパ企画の長編映画第2弾がこの『リバー、流れないでよ』なのです。

上田誠のドラマや舞台は大好きで、また私が京都出身ということもありとても贔屓にしていたので『リバー、流れないでよ』はとても楽しみな映画でした。

感想、めっちゃ面白かった!

簡単なあらすじ

画像引用:Amazon.co.jp

舞台は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」。いつもと同じように仲居の仕事をしていたミコト。
川をふと眺め、佇んでいたところ女将に呼ばれ仕事へ戻るが、何か異変に気がつく

さっき片付けたばかりの部屋をまた片付けている?
番頭とはさっきと全く同じ会話をしている?

何かがおかしいと感じながらも、普段通りすごしてみるがまたすぐに川のほとりに戻され、また同じ時間をやり直しているではないか。

画像引用:映画.com

そしてそれは仲居のミコトだけではなく、番頭や女将、料理人、宿泊客までもが同じ2分間を何度もループしていることに気がついた。
ずっと熱くならない熱燗。なくならない〆の雑炊。永遠に出られない風呂場。

何度も繰り返す2分間のループ。このループの原因はなんだ?どうやったらこのループは終わるのか!?

『リバー、流れないでよ』の見どころ

2分という限定的なタイムループ

画像引用:映画.com

この映画は、なぜか繰り返してしまう時間軸(タイムループ)の中で、従業員と宿泊客があれこれ思考錯誤しながら解決の糸口を探っていくところが最大の見どころ。

そしてそのタイムループする時間が「2分」という、脅威の短時間ループなところが他のタイムループ作品と一線を画しています。

その短いループを繰り返しながら、このループから抜け出す方法を全員で探りあうのですが、もう少しで解決の糸口が見つかりそう!新たなステップにいけそう!というときに時間切れ

しかし2分が終わってしまうと、また最初からやり直しというわけではなく、記憶は次のループでも引き継いでいるので少しづつ少しづつ、謎が解き明かされていくのです。

それを見ているこちらは、いつの間にか身を乗り出して次の2分はどうなるか!と応援してしまいます。

時間がループしているのにどんどん進んで行くストーリーに、目が離せません。

繰り返されるワンカットシーン

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こちらもまたこの映画の最大の見どころ。

前情報を知らないまま見たため、途中で違和感に気づいてとても驚いたのですが、何度も繰り返される2分間のシーンはすべてワンカットで撮影されているのです。

2分間のワンカットだからこそ、登場人物たちが本当に慌てているように見えるし、実際に2分で時間切れになってしまうので映画の世界への没入感がとても高いのです。

狭い空間でのワンカットなので撮影は相当苦労されたと思うのですが、そこはやはり「ヨーロッパ企画」という超人気劇団の力ですね。

俳優陣はテレビドラマなどで売れているような有名俳優はほとんど出ていないのですが、ヨーロッパ企画の劇団役者の見事な演技で、また劇団員だからこそますます面白くなっている作品なのだと感じました。

映画というよりも演劇を見ているような気分にもなれます。

ワンカットってなんだかワクワクしますよね。ワンカットであれば、低予算でも工夫と稽古しだいでそのシーンは無限に面白くなります。

『リバー、流れないでよ』はそのワンカットをこれでもかと、湯水のように何度も垂れ流すすごい映画なのです。

無駄を削ぎ落とした脚本と会話劇

画像引用:映画.com

ワンカットの手法も素晴らしいですが、この映画の脚本も素晴らしい。

密室空間での会話劇でストーリーは進んでいきます。

2分間という短い間に宿泊客や従業員の様々な群像劇が散りばめられており、タイムループをするたびに明らかになっていくことや、壊れていく関係性、または修復される関係性など、それはさながら『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』を思い出しました。

2分間から抜け出せなくなった原因で困る人もいれば、永遠に明日が来ないことに安堵するものいる。

何度も繰り返す2分のループの間に成長していくものもいる。

そして群像劇的に人々が交差するので、繰り返す2分の間にミッションがどんどん増えていく様がとてもワクワクします。

個人的にはどれだけ食べても減らない雑炊と、何度も風呂に戻される編集者が笑えて仕方ありませんでした。

画像引用:映画.com

個人的な評価

評価:★★★★☆ 4点/5点中

いやーこれは面白いです。

2分のタイムループというのが斬新で、ワンカットの映像も面白い。舞台仕込みの俳優陣の演技も見ていて安心感もあり、密室空間の中の怒涛の会話劇にもワクワクさせられました。

一人の夜にまったりリラックスしながら見るタイプの映画ではなく、どちらかというと家族やツレとワイワイあれこれ言いながら見るのに向いている映画かと思います。

時間も86分とタイトなのでサクッと見れてしまいます。逆にこれが2時間も続くとしんどいと思うので適正な上映時間ですね。

一度は見ていて損はありません。

感想とレビュー

画像引用:映画.com

何度も繰り返す2分間、どんなことをしても2分前の状態に戻されてしまう

熱燗を温めても、雑炊を食べても、そして命を絶ってしまっても

ポジティブに扱うならば、「何度でもやり直せる2分間」であるが、逆に考えると何をやっても「前に進むことができない2分間」である。

その二律背反こそがこの映画のテーマと言えるのではないでしょうか。

「前に進むことができない2分間」の中でもミコトとタクは自分たちなりに試行錯誤をしながら前に進もうとします。
2分しかないけどドライブに行こうとか。2分しかないけど映画を見ようとか。
記憶はそのままなんだから2分ずつ進めて見れば良いんだよと、言って笑い合っています。

このシーンを見て、同じ2分を何度も繰り返すというのはタイムパフォーマンス(タイパ)が叫ばれる昨今でなんとも皮肉な設定だなと思いました。

InstagramなどSNSを見ていると、最近はショート動画ばかりが流れてきます。なんとなく、SNSのショート動画を眺めていると

昨日も同じ動画を見たような…いやむしろ数分前にも見たような…

そういった事態に陥ることがあります。そんなときにふと思い出すのがこの『リバー、流れないでよ』。

この世界が時間に縛られた世界でないのなら、自分はこんなどうでもいい動画を見ている場合ではない。『リバー、流れないでよ』のように未来に向けて行動し続けよう。と考えるのです。

画像引用:映画.com

そうそう、これは余談でこの映画では同じ時間をタイムループしてるはずなのに晴れの日があったり雪が降っていたり、明らかに日が暮れてきていたりします。
撮影日が違うためと予想されるが、明らかにちょっと違和感を覚えます。

しかし、それは意図的なものではなく撮影日が大雪でどうしようもなかったためだそうですw

例えば予算が潤沢にあれば、どれだけループしても天候に左右されないように全く同じ景色にするといったことも可能でしょう。
しかし、こういった荒い作りも限られた予算で制作しているからこその良さであり、またこの映画のジャンルがコメディだからこそ許容ができる世界なので私はそれ含め大好きでした。

※映画内ではタイムループはしているが、周りの時間は微妙にずれている的な説明がありましたw

『リバー、流れないでよ』は無料視聴できる?

『リバー、流れないでよ』はAmazonプライム・ビデオで見ることができます。

DMM TVLeminoでも見ることができますが、2024年12月現在レンタル視聴のみとなり追加料金が発生します。

Amazonプライム・ビデオなら追加料金なしで『リバー、流れないでよ』が見放題。

Amazonプライムに登録していない人でも初回30日間は無料で試せるので、この機会にぜひ見てみてくださいね。

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