映画やドラマは最新作が毎日のように更新され、そのたびに作品のクオリティ、綺麗な背景や脚本が絶賛され、VODで簡単に配信される。
そんな世の中で私は気づけば話題の最新作ばかり追いかけていたようで、往年の作品を後回しにしていたことに気が付きました。
これではいかん。
さあ、手始めにディズニープラスで見れる『ザ・フライ』を見てみよう。なになに?40年前の作品だなんて随分古いなあ、大したことないんだろうがまあ、いいか。
そんな気軽な気持ちで見始めたことを、激烈に、それはそれは激烈に、激烈に激烈に後悔させる映画でした。
この記事では『ザ・フライ』のネタバレを含む感想を記載していきます。
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基本情報
タイトル | 『ザ・フライ』(英題『THE・FLY』) |
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配信 | ディズニープラス |
公開年 | 1986年 |
脚本 | デヴィッド・クローネンバーグ、チャールズ・エドワード・ポーグ |
監督 | デヴィッド・クローネンバーグ |
ジャンル | SFホラー |
キャスト | ジェフ・ゴールドブラム、ジーナ・デイヴィス、ジョン・ゲッツ 他 |
上映時間 | 95分 |
画像引用:IMDb.com
監督のデヴィッド・クローネンバーグはSFホラー映画界の巨匠であり、鬼才と呼ばれ現代ではカルト的な人気のある監督です。
カンヌ映画祭で途中退出者が続出したという噂の『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』が記憶には新しいですね。
映画祭、途中退出者続出しがち。
彼は監督であり、脚本家でもある。監督と脚本のどちらがその映画を作るのかという論争があるが、私はどちらかというと脚本が映画の多くを作り上げていると考えるほうである。
この映画は本当に気持ち悪くてこの記事を書いている途中も何度か気分が悪くなったほどなのだが、デヴィッド・クローネンバーグが監督であり脚本も担当しているということは、この不快な気分の全責任は彼にあるということになる。
会ったら謝りに来てほしいレベルである。
『ザ・フライ』のあらすじ
科学者のセスは女性記者ヴェロニカをパーティーでお持ち帰り。
画像引用:IMDb.com
セスの家にやってきたヴェロニカが見たものは、物質を分解・再構築してワープさせる転送装置“テレポッド”だった。
「これを見たものは生きて帰れない」など急に怖いことを言うセス。この時点で頭おかしい。しかしなぜかヴェロニカは明らかに変人のセスを気に入りその日から恋仲に。
画期的な発明である“テレポッド”だが、実はまだ生物の転送には成功していなかった。
ある日ヴェロニカが元恋人のところに行っていることを知ったセスは、自暴自棄になり酔った勢いで自分自身を転送実験してしまう。
画像引用:IMDb.com
一見問題なく転送ができたかのように見えたが、なんとテレポッドの中には一匹のハエが混じっていた。
つまりセスとハエは、分子レベルで融合されてしまったのだ。
最初は何も変化がないようだが、日が経過するにつれてセスの体に徐々に異変が出始める….。
『ザ・フライ』のネタバレ感想
ここからはネタバレ含む感想ですので、読みたくない方は「個人的な評価」まで飛ばしてください。
ハエになる
『猫の恩返し』では猫になりますよね。スピッツの曲でも『猫になりたい』なんて曲があったりして、「あ〜猫にでもなりたいなー」なんてと思うことって結構ありますね。
『ザ・フライ』ではハエと一緒に転送装置に入ってしまい、結果ハエ男になってしまいます。
酔っ払った勢いで自分を転送しちゃえ!って感じで実験してみたら、ハエが混じっていたことに気が付かなかったのです。
なんてドジなんだろう。
そしてハエはハエでも、私は小さいハエになってブンブン飛び回るのかと思っていたのですが、そんな生易しい代物ではない。
画像引用:IMDb.com
人間のサイズのまま、太い毛が生えるなど徐々にハエの特徴がでてきて最後には特大サイズのグチャグチャのハエのクリーチャーになってしまうのです。
あまりにもキモい描写
画像引用:IMDb.com
この映画、1986年の作品でありCGの類は一切使われていません。
昨今の映画ではCGの描写が当たり前で、私はそのテクスチャに慣れてしまったせいか、グロい描写なんかも特段気にならないことがほとんどです。
しかし、この『ザ・フライ』はどうだろうか。糞キモいクリーチャーにはCGが使われておらず、特殊メイクとパペットで作られているのです。
崩れ落ちる目、ちぎれ落ちるアゴ。食べ物を消化するときに口から出す消化液。ヌメヌメでおどろおどろしい赤黒い肌。それらはすべて潤滑剤やゼラチン、コンドームなどを駆使して実際に生み出されたものなのだ。
画像引用:IMDb.com
これらの表現がCGには到底生み出せないほどのリアルさを伴っており、それはそれはグロくて気持ち悪すぎる映像になっているのです。
本当にもう二度と見たくないと思ったのはこの映画が初めてではないだろうか。
明らかに度が過ぎたグロ描写は度肝を抜かれるほど衝撃であり、だが同時に強い感動をも覚えました。
悲劇のラブストーリー
この映画がただのグロ映画に終わらないところ、それは悲劇のラブストーリーという一本の軸があるところです。
体や顔に徐々におかしくなっていき、最後には残酷なハエ男になってしまうセス。そしてさらにハエ男になった上に転送装置にかけられ、もうハエですらない訳がわからん姿になってしまいます。
衝撃映像すぎてブログに載せられません。
映画を見てください。
これがまた糞グロわけなのですが、最後にハエ男になったセスは恋人が持った銃口を自分の頭に向け、遠のく意識の中「俺を殺してくれ」と無言で訴えるのです。
画像引用:IMDb.com
恋人は糞ハエ男になったセスを最後の最後まで諦めませんでした。どう見てもありえない怪物の姿にも関わらずセスを愛そうとします。
しかし最後の最後は死ぬことを望んだセスをヴェロニカは撃ってしまう。なぜならヴェロニカを自分が傷つけてしまうから。そしてもう助からないことが明白だから。
これはなんとも悲しいラストシーンでした。
人生で一度は見ておくべき理由
この映画を見ている途中は、何度も吐き気がして見たことを非常に後悔しました。
しかし、このグロさは一度見たら止まらないほどにリアルで不思議な中毒性があります。
画像引用:IMDb.com
私は今までみてきた中で最もグロくて、気持ち悪いホラー映画でした。ですが、ここまでの気持ち悪い映像を見ていることに一種のカタルシスを感じるようになり、ラストに近づくにつれてアドレナリンがザバザバ出ました。
そして本当に本当に気持ち悪いのは、セスが完全にハエ男に変身してしまう前後のラスト数分。ここは見ている自分も悶え苦しみました。でもそれが今まで経験したことのない映像体験の快感でもありました。
さらに最後は前述したように、ハエ男は最後の最後は自分を殺してくれと恋人に懇願するのです。糞気持ち悪い映像からの悲しすぎるラストは美しさをも伴っていました。
こんなに気持ちを揺さぶる映画体験が他にあっただろうか?もう二度と見たくない糞映画ではあるが、人生で一度は見ておくべき映画だと強く思いました。
テーマと考察
ハエ男は老化のメタファーであると、監督のデヴィット・クローネンバーグが公表しています。
この映画のテーマは愛と老化なのです。
人は老化すると、背が縮んで、顔もよれて大きくなり、腰は曲がってくるものです。足はおぼつかず、まともに歩くこともできない。それは悲しいことに死に向かっていると同義と言えます。
セスが徐々にハエ男になってしまうことをヴェロニカに告白するシーンでは、今までずっと強気だった彼からは考えられないような悲劇の声をあげてしまいます。
画像引用:IMDb.com
「細胞の混乱と革命が起きて、今までにない形で崩壊していく。やがて死が訪れ、すべてが終わる。怖いんだ」
ヴェロニカは異形の姿になりつつあるセスをそれでも抱きしめます。彼女の心は恋人の死を目前にしてもなお、折れることがなかったと判明するシーンです。
映画史に残る名シーン。
彼を抱きしめたときの彼女の表情は、死を待つことしかできない諦めと悲しみの心も表していたのはないでしょうか。
人間は生きている限り細胞が老化し、死に向かっていきます。深い愛も「死」には勝つことができなかったのです。
個人的な評価
評価: 4.2点/5点中
気持ち悪くて最悪レベルの映画と何度も言っておきながら、生涯忘れることのない映画であることは間違いないので4.2点と高評価にしました。
人におすすめできるのか、と言われるとちょっと悩んでしまいますが、「カタルシスを感じるよ。グロすぎて一周回ってストレス解消にもなるよ」という一言を添えて「でも人生で一度は見ておくべきだよ」とおすすめしようかなと思います。
衝撃度ではNo.1映画。
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